2011年開催目録

開催日 演 題 発表者 所 属

今春、山岳写真の草分けと知られる故田淵行男さんの写真コンテスト「第3回田淵行男賞」の最高賞をいただいた。子どもの頃から根っからの動物好きで、中学生の時、父親にカメラを買ってもらったことが今に及ぶ。「身近にある自然にこそ、大切なことが隠されている!」をモットーとする独自の自然感から、今宵は、受賞作品を披露いただきながらこれまでに語られることの少なかった北海道の自然の魅力に迫ってみたいと思います。

日本の国土の約7割は森林であり、森林の約4割は木材を生産するために造成された人工林です。本州の人工林はスギ・ヒノキの人工林が主体ですが、北海道はトドマツとカラマツの人工林が主体です。日本の人工林面積の大きさは世界第5位、森林に占める人工林の割合(4割)は世界第二位で、日本は人工林大国といえます。日本の森林の鳥類多様性を考える上で、人工林は大きな役割を担っていると考えられます。今回は、人工林の管理と鳥類の多様性について考えてみたいと思います。

カイツブリは北海道では夏鳥として分布する水鳥です。しかし、実は北海道ではほとんど生態や行動に関する研究が行われておらず、謎の多い鳥といえます。浮き巣で営巣し、雛は孵化してまもなく泳ぐことができるなど、それら生活においては不思議がいっぱいです。今回は南幌町で観察したカイツブリの生息の現状を示しながら、水鳥類について話し合えたらと思います。

私は、道内外の各地へでかけ、四季折々の鳥たちと出会い、自然に親しむことを何よりの楽しみとしています。そして、まったくの自己流ではありますが、10年ほど前からそれらを題材にして短歌を詠むようになりました。今回は、近作を中心にして、同時に撮影した写真と併せて紹介させていただきます。

石狩地域は、夏鳥の繁殖地、冬鳥の越冬地、旅鳥の渡り中継地として利用されています。鳥類相からして特殊性は含まれず、普通の鳥たちの普通の生息・飛来を支えており、環境保護などを通してのその普通性の持続が将来的課題として重要な地域といえます。今回は、河口近くの石狩川、石狩浜、石狩湾新港、海浜草原一帯の野鳥の生息状況と季節性などを中心にお話しします。

ヤブサメといえば、その変わった鳴き声はバードウォッチャーなら誰でも知っているだろう。しかし、声はすれども姿は見えず、じっくり観察したことのある人はなかなかいません。 実はそんなヤブサメ、人知れず藪の中、闇の中、なんとも奇妙な生活を送っているのです。今回は、野外ではなかなか見ることの出来ないヤブサメの生態をじっくりご覧いただくとともに、そんなヤブサメを研究する変わった研究者の生態も併せて紹介します。

野鳥勉強会でもたびたび登場するアオサギです。玉田が何でアオサギ?と思われるかもしれませんが、実はこの3年、こっそり調べていました。北海道は新潟と並ぶ全国一の米どころです。石狩空知地方には広大な田んぼが広がり、アオサギもよく見かけます。話題提供をする7月は、ちょうどアオサギが田んぼをよく利用している時期です。このアオサギが、田んぼをどのように利用しているのか?田んぼで何をしているのか?そんなことを紹介します。

初夏の札幌の森林を美しく彩ってくれる夏鳥たち。彼らが毎年、同じ場所で最初に記録される日は、種類によって、また年によって変わっているのでしょうか? 羊ヶ丘の森林ではこれまで27種について、ここ20年間の初認記録の蓄積があります。それらを眺めてみると、何となく面白いことがわかってきそうな気が・・・ もし変化があるとしたら何が原因だったのか、一緒に考えてみませんか?

バードウォッチングや散歩などで見かける虫ですが、虫の名前や行動、特に鳥のエサとなるチョウやガの幼虫の形態などについて、スライドを通じて皆さんと楽しく談義できればと思います。

北海道では、研究者の学術論文などのクマ類の生態や特徴から、豊作年の翌春には出生率が高いことなどを情報として把握し、秋の山の実なりの豊作傾向とヒグマの多産、そしてその影響による生息域攪乱についての各種分析を行い、被害防止等の対策と準備に生かしています。この秋のクマの出没はどうなのでしょうか?それら真相を探ってみます。

野生鳥獣の生息数はタンチョウのように極端少ないもの以外は不明です。意外と知られていませんが、野生鳥獣の被害は長い年数で見ると変化していることが分かり、簡易の生息状況モニタリングは可能といえます。前回に引き続いてヒグマ出没状況の捕捉も行いながら、鳥獣における種間競合によるトレードオフや人間界の社会や経済構造の変化増減などについての推察を行ってみます。

羊ヶ丘は都市に近接しているにもかかわらず、豊かな生物相を保っています。調査地である森林総合研究所北海道支所の実験林ではこの20年間で約90種の鳥類に標識し、渡りの時期の動向や回帰の状況、渡り鳥の移動状況などを調査してきました。以前にもこの勉強会で一端をお話しましたが、その後の状況をお話いたします。